新しい結晶法と具体的テーマ

周期双晶構造を導入した常誘電体ボレート結晶の非線形光学応用



擬似位相整合 (QPM) は、位相不整合量を非線形光学定数の空間的変調構造を利用して補償する手法である。 最も高効率なQPM構造は、周期的に2次非線形光学定数の符号を反転させたものである。 QPMのメリットとして、次の3点が挙げられる。

 1. 材料の複屈折に依存しない
 2. 位相整合波長、許容幅の設計
 3. 優れたビームクオリティ

しかし、非線形光学結晶として優れた特性を持つ、ボレート結晶は、常誘電体結晶であり、通常の電圧印加による ポーリングが不可能である。


四ホウ酸リチウム単結晶 (Li2B4O7:LB4)の特徴
真空紫外域での波長変換における利点
1. 170 nmまで透明:高い光損傷閾値
2. 大型結晶を育成できる (コングルエント)
3. 結晶の取り扱いが容易:吸湿性小
4. 多くの物性データがある

点群  4mm (tetragonal system)
空間群  I41cd
格子定数  a=b=9.479, c=10.297 (Å)
d定数  d31=0.12, d33=0.93 (pm/V)

しかし、複屈折による位相整合では244nmが限界



常誘電体の四ホウ酸リチウム結晶にQPM構造を作製する方法として 41 (右回り螺旋) から43への (左回り螺旋) 対称性の変化を利用する。
→c軸の反転による双晶
→最大のd定数を利用することができる
CZ成長やブリッジマン成長において双晶が観察されている
それでは、いかにして周期双晶構造を作製するか?


融液・溶液から結晶を成長する際に、成長界面へ外部電場を印加し結晶の対称性を制御する。以下のような条件で、 周期双晶構造の原型が作製された。

成長速度   0.7 mm/h
温度勾配   60℃/cm
印加電場   直流 2000 V/cm
印加間隔   20μm