
![]() |
図1 s-LN、c−LN、及び、育成した cs-MgO:LN 結晶とその元素サイト構造。 |
![]() |
図2 cs-MgO:LN と従来開発のニオブ酸リチウム結晶の組成。
cs-MgO:LN 近傍の融点分布も示した。 |
![]() |
図3 変換される波長分布による各結晶の均質性。 色の分布が一様である結晶ほど均質性が高い。 (a) cs-MgO:LN, (b) c-LN, (c) 5MgO:LN, (d) s-LN |
この結晶の開発には2つの学術的ポイントがあります。化学量論の概念の一新と、融液イオン種の存在により発生する界面電位からイオン種の activity を論じたことです。 化学量論は、イギリスの化学者ダルトンが著書「化学の新体系、1808」で提唱したように、化合物の構成元素の比は簡単な整数比となるという定比組成の概念で扱われてきました。 我々はこの概念の本質として、結晶を構成する元素の activity が1となり得る(なるではない)時、この組成を化学量論組成と定義しました。結晶には、元素が入る場所(サイト)があります。 この時、元素が他に迷惑をかけるでもなく、譲られるでもなくスムースに自分の席につける状態が activity = 1 です。図2の line A 上に結晶がある時、 各元素(Li, Nb, O, Mg, vacancy)の Li サイトにおけるエネルギー状態(化学ポテンシャルという)は、line 上の組成に応じて変化しますが、これらの activity はその値を1に保つことができるのです。 すなわち、この線上にある結晶は化学量論組成を持ちます。
一方、調和融解組成は、最も高い融点を示します。実は、Mg を入れたこの系では、最高融点組成が line A 上に存在することが熱力学的解析によりわかりました。 また、実験でも、界面ポテンシャルはゼロを示し、界面融液においてイオン種の偏析(たまり)が完全に無くなることを示しました。このことは、結晶だけでなく、 融液の各元素の activity も1であることを示し、cs-MgO:LN の組成が、調和融解組成であり同時に化学量論組成でもあることが導かれました。 このようにして開発された cs-MgO:LN は、図3に示すように、変換される波長分布にムラが無く、従来にない均質性と、優れた波長変換効率を示します。
関連発表論文 | |
---|---|
1) | H. Kimura, T. Taniuchi, S. Iida and S. Uda, J. Cryst. Growth, 312 (2010) 3425. |
2) | H. Kimura and S. Uda, J. Cryst. Growth, 311 (2009) 4094. |